鍼(はり)の裏ネタ

体質・体調と鍼の痛み~鍼と痛み4~

色白でもち肌、ぽっちゃり、知らない間に内出血している。
あるいは、
表皮がピンッと張っていて少しかたい。性格的にテンション高い。


こういう体質の方は痛がりが多いです。
中国医学では気滞痛とよびます。
気の流れが滞って悪い人です。

気滞の強い人は、「てい鍼」というクギの先を丸くしたような、
刺さない鍼をあてるだけでも痛がる人がいます。

指す前に、肌を揉んだりさすったりしてやると難なく入ります。
ちょっとした技術なんですけどね。


カゼひいている。

特にカゼの初期でからだがゾクゾク寒気がする

こういう人に鍼を刺すと痛がることが多いです。

これは体表に冷えが入って、
皮膚が引きつっているんですね~
温灸などであたためてから刺すと、
痛みが少ないです。


初めての治療院に行ったら、ここに書いたことを思い出し、
先生がどうされるか観察してください。

上手な先生は、患者さんひとりひとり、またそのときどき
の皮膚の状態を診て、鍼をさします。


下手な鍼は痛い?~鍼と痛み3~

鍼管を使えば痛みは少ないんですが、
使う場合と使わない場合では
体の反応自体がちょっと違ってきます。
そのために、鍼管をほとんど使わない流儀もあります。

私の師匠の年代から言わせると、
以前より刺入の下手な鍼灸師が増えてきたそうです。

ひとつには国家試験に実技試験がなくなったのと、
もうひとつは痛みを起こしにくい技術を持った教師が
少なくなってきたのが大きな理由のようです。

鍼灸学校出ててすぐに教員養成過程に入り、
卒業してそのまま教員になって
臨床経験ほとんどない鍼灸学校の教員が増えているからでしょう。


昔の治療家は師匠から
「浮き物通し」「硬物通し」「生き物通し」という練習をさせられました。

「浮き物通し」は、大きな鉢や鍋に水をいっぱいはって、
果物を浮かべ、これに刺す練習です。
水がこぼれないように刺すのは結構難しいです。

「硬物通し」は木に刺す練習です。薄い板から厚い板へ、
柔らかい木から硬い木へと刺す訓練をします。

関西で活躍している某大先生なんかは、
鹿の骨に穴開ける練習をしてたそうです。

「生き物通し」は、
犬や猫に逃げられないように刺す練習です。
痛い鍼したらひっかかれて逃げられますから。


今の若い人で、
寸6の1番銀鍼を鍼管使わずに刺せる方はどれだけいるでしょう?
寸6の1番というのは長さが5センチ弱、
太さが0.16ミリの鍼です。

銀鍼は一般に使われているステンレス鍼より、
ずうっと柔らかいんです。
硬い人の髪の毛くらいの柔らかさです。

こういう鍼を、鍼管を使わずに刺すのはかなり技術いります。
今でも日本の古典的な鍼をしている流派では
こういう鍼を使って刺入する練習をよくしてらっしゃいます。

でも、そういうところで勉強したこと無い方は、そんな刺し方できません。


やっぱり痛い?鍼管篇 ~鍼と痛み2~

<<細い鍼は痛くないのか?~鍼と痛み1~  下手な鍼は痛い?~鍼と痛み3~ >>

前回、「細い鍼は痛くないのか?」で、
鍼の太さと痛みについて書きました。
今回は治療者の技術の問題について書きます。


鍼を刺す施術者の技術力によっても、痛みが左右されます。
まあ、当然といえば、当然ですが。

いろんな鍼灸院で治療を経験された方なら、
鍼を刺すときに金属の管に入れて刺されたことがあるかと思います。
あの金属の管を鍼管(しんかん)と呼びます。

杉山和一っていう江戸時代の鍼灸師が発明したものですが、
痛みをできるだけ起こさずに刺すのが主たる目的です。
鍼管はそれ以外にも利用目的があるんですが、
話がそれますのでここでは書きません。


で、今回は鍼管の種類と痛みについての話。
今おおかたの鍼灸院では使い捨ての鍼を使っています。
これについているプラスチックの鍼管は薄くて細いんですよね~。

鍼管は痛みを軽減させるものですが、もっとしっかりしている
ヤツの方が痛みが少ない。

次の写真を見てください。

P1020819


太さが全然違うでしょう。
左側の2本は杉山真伝流という
江戸時代の流派が使っていた鍼管を復元したもの。
銀製でずっしりしています。

右から2本目が、治療院向けの業者から普通に買える六角鍼管。
一番右が比較用の爪楊枝です。


まっ、鍼管と痛みはこんなもんかな?


そうそう、書き忘れましたが、鍼管を使って鍼を刺すときに、
鍼の頭をトントンって叩くんですが、
このリズムや圧も痛みに関係してきます。
これも技術ですね。

<<細い鍼は痛くないのか?~鍼と痛み1~  下手な鍼は痛い?~鍼と痛み3~ >>


細い鍼は痛くないのか?~鍼と痛み1~

>>やっぱり痛い?鍼管篇 ~鍼と痛み2~

これをお読みの方は、他の治療院のHPもご覧になっているかと思います。

Q&Aのコーナーで「うちは髪の毛くらいの太さの鍼を使っているので
痛みはほとんど無いです。」なんて書いているのを読まれたことはないですか?

今回は鍼の痛みと太さの話。

鍼治療で使う鍼の太さですが、これは番数で表します。

1番、2番、3番・・・っていう感じです。
1番は0.16ミリ、2番は0.18、3番は0.20ミリと
0.02ミリ間隔で決められています。

よく使われるのは1番から5番くらいまでで、
5番だと、ちょっと太いかなぁって感じです。

電気を通さないなら1番~3番、
電気を通すのなら3番~5番が定番かな?
もちろんこれより細いのや太いのがあります。

以上が前提知識。

で、太さと痛みですが実はあまり関係ないです。それよりも
鍼先の質の方が重要です。

良く切れる包丁で手を少しくらい切っても痛みはあまり感じない。
でも切れない包丁で同じだけ切ったらすごく痛い。
あれといっしょで、鍼先の切れ味が痛みを左右するというのが実状なんですね。

で、切れ味なんですが、やはり日本製がいい。
安いのは中国製がほとんどなんですが、これがだめ。

使い捨ての鍼は100本まとめて箱に入っているのが多いんですが、
半分ぐらいだめなのが、なんどもあったので、うちの治療院では
ほぼ全部日本製に変えました。

業者の営業マンに中国の製造事情を聞くと・・・・
中国製は、中国人の女性工員がグラインダーで手で研ぎ、
それを滅菌しているものもあるとか・・・・
日本製の手製鍼は極上ものですが、
中国のは劣悪品です。

日本製バンザイ!

>>やっぱり痛い?鍼管篇 ~鍼と痛み2~


鍼の本数と効果

初診の患者さんの治療が終わってから、

あれ~こんなに刺す鍼が少ないんですか~?

なんてびっくりされるときがあります。

当院で1回の治療で打つ本数は、
4~8本くらいがほとんどです。

10本打てば、多かったなぁ~って思います。
まあこういうときはだいたい、難しい腰痛や頚椎症・麻痺で
あったりするんですけどね。


治療にあたっては、体がどのような状態で、
どのように持って行くかを意識して一本うち、
それがちゃんと思ったように体に反応しているかを、
確認して刺していきます。

その裏には患者さんの生理状態が
どのように変化していくかを、きちんと観察して治そうという
意識が働いています。

流儀の違い、流儀や治療家の能力の差に
よって見えているものの視点や深みは違いますが、
古典にもとづいた流儀は、おおむねこのように治療していきます。

そうすると一本が体に与える影響力が非常に大きくなります。


多く刺すということは、それだけ鍼一本が体に与える影響力が
小さいと言うことです。ということは、深く考えていないということ
です。難しいことを考えているかもしれませんが、それが鍼一本に
反映されていないということです。


武道で、突きでも蹴りでもいいですけど、
力のある人は少ない攻防で相手を倒します。
一撃の強さが弱い人とは違うからです。

あれこれ難しいことを考えることが、
一撃の強さに反映しているのではありません。

相手の体の動きに自分をどう深く作用させるか、
毎日の習練で体に覚えさせていきます。
鍼一本に力を込めるのと同じです。


なおればどっちでもいい。

そう、そのとおりです。
でも、たくさん鍼をつかうと、それだけ元気を消耗します。


テレビの鍼治療とはずいぶん違いますね~

初診の患者さんの治療が終わってから、

ずいぶん刺す鍼が少ないんですね~
テレビでたくさん刺されているのを見て覚悟してきたんですけどね~

なんてびっくりされるときがあります。

そりゃぁ、そうです。うちみたいに本数少なかったら
見ている人は何やっているのか分からないし、
番組構成上、盛り上がりに欠けて面白くない。


ずいぶん鍼が細いんですね~
テレビで太い鍼を痛そうに刺されているのを見て覚悟してきたんですけどね~

というのもよく言われるんですが、上と同じ理屈です。

ようするに、どちらもテレビではウケないんですね。
ウケるのは大道芸です。

もちろん特殊な例では極端に太いのや長いのを使ったりすることも
ありますが、どうしてもそういう治療が必要なことは、
全体からみたら、極々少数です。

大道芸を本物と見間違えてはいけません。


妊娠中の鍼、大丈夫?

「妊娠中に鍼をしてもだいじょうぶですか?」という
ご質問はよくいただきます。

鍼灸治療にも昔から産科の治療があります。
つわり・逆子・予定日を過ぎても出てこない、
出産後の疲労回復等々いろいろ対応が可能です。

ですから妊婦さんが鍼灸治療をしてもかまいません。


ただし注意しないといけない点がいくつかあります。

結論から先にいいますと、まだ安定期に入っていない方
が初めて鍼灸治療を受けられるのは、避けた方が無難です。

継続して鍼灸治療を受けられていた方が妊娠されても、
施術者はその方がどういう体調をしていて、
どういう治療をするとどのような反応を起こすかを
知っているので無理な治療はしません。
患者さんも鍼灸に慣れています。

しかし初めての方に治療を行う場合、
どういう反応があるのかを施術者が予測するのは結構難しいので、
リスクの高い治療をしてしまうかもしれません。

これは基本的な診察法ができる施術者でもそうなんです。
ちょうどいい具合の刺激量とか戦法は
数回治療しないとなかなか見えてきません。

武術における対戦相手との間合いの取り方と同じで、
適切な間合いの取り方というのはかなり難しいんです。

安定期に入っていない時期に、
ちょっとした刺激過多とか治療方法の違いで
流産させてしまうこともあります。
妊娠3ヶ月くらいまでなら鍼灸で意図的に堕胎させることも
難しくはないくらいです。

治療者が患者さんと治療の間合いの取り方がうまくいかないと
流産させてしまうかもしれません。
それに、どうしたら流産させてしまうかも知らない鍼灸師も結構います。


また、鍼灸師に落ち度がなくても
母胎や胎児が原因で流産してしまうことがあります。
妊娠初期における流産の原因の大半は胎児の側の遺伝的な異常です。
しかしそうであっても、流産が鍼灸師の責任のようにとられてしまうことこともあります。
そのようになったらお互い嫌な思いをします。

ということでちょっと落ち着くまでは初診で受診しない方が無難です。

できれば、鍼灸治療を受けたことがない人は、
妊娠中初期に初診で鍼灸治療をしない方がいいです。

ただし、妊娠する前から治療を受けていた方が、
体調管理だとか、逆子の治療だとか、
安産のために治療をうけるのはいいかと思います。

逆子の灸治療は有名で、
産婦人科の医院で取り入れているところも結構あります。

蛇足ですが、ツボの本などで安産のツボを紹介しているのがありますが、
患者さんの自己判断でそういうのをしない方がいいです。
安産のツボとしてよく使われるツボなんて、
人工流産にも使えるツボだったりしますから。
刺激方法でどちらにも使えるんです。

しかし、そんな使い分けは素人向けのツボの本にはまず書いていません。
書いている人間自身が知らないことがほとんどです。
安易に自己判断で、使わないことです。


耳ツボダイエット

一時期は流行りましたが、今では下火になっていますね。

でも、エステサロンやリラクゼーションサロンの情報誌なんかを見ていると、
いまだにやっていて、高額な料金をとっているところがあるようです。

そういったところでは、どういうことをしているのでしょうか?


まず、カウンセリングですね。
どういう日常生活を送っているのかを質問して情報を集め、
改善点を促す。

そして耳に鍼をしたり金粒・銀粒などを貼り付ける。
耳に貼り付ける材料を購入して毎日貼り替える指導が
入ってくるかもしれません。

最後に食事や運動指導ですかね?
ひょっとしたら治療院に置いてあるサプリメントやダイエット食品を
勧められたとかじゃないでしょうか?

まあ、こんなところかな?


耳のツボに鍼をしようが、なんかの粒を貼り付けようが、
それでは痩せません。できるのは食欲を下げることだけです。
まあ、ようするに食欲を減らしてダイエットの手助けをするだけです。
耳ツボへの刺激そのもので痩せるわけではありません。

食事の量が減るわけですから、痩せるのはあたりまえですね。
ここをだまされないように-いや、勘違いしないでくださいね。

キモは食事制限や運動指導です。耳ツボ云々は
客寄せ部分なんですね。身も蓋もない話でスイマセンねぇ。

「ということわぁ、耳に鍼をしたり、なんかを貼り付けたりしなかっても、
食事を同じだけ減らせば、同じだけ痩せるんですか?」
という疑問が沸いてくると思います。
答えは、「そのとおり」です。これも身も蓋もない話でスンマセン


「そんなこといったってぇ、やせたんですよぉ~」

なんておっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。


考えてもみてください。
耳のツボを刺激するだけで痩せるとしたら、
鍼灸師はみんなしていますし、鍼灸治療院はどこも大流行です。
耳ツボダイエット鍼灸だけで家を建てたとか、ビルを建てたとかって話は、
鍼灸師になって15年以上になりますが、
聞いたことがありません(実際いたらスイマセン)。
ウチだってビンボー脱出してますって(苦笑)


まあこの記事で言いたいことは以上ですが、次でちょっとだけで治療院の肩を持ちます。

食欲過多の原因にはいくつかありますが、中医的には胃熱ですね。
胃に熱を持っているとお腹が空きます。
で、この場合、胃熱を治す治療をしてやれば、食欲は減ります。

耳ツボに刺激で胃熱を下げる治療をするだけなら、
その場限りの治療になってしまいますが、
胃腸全体を調えると効果が持続します。
こちらの方が本格的な治療になりますが、
出来る鍼灸師は限られてきます。

それに「胃腸調えダイエット」じゃぁキャッチ・コピーにならないなぁ。
「耳ツボ・ダイエット」の方が客寄せになるコピーですね。

あっ、これじゃぁ肩を持ったことにならないかぁ?

食欲過多の他の原因として、炭水化物、
特に砂糖の取りすぎというのも上げられます。
なんで食欲過多の原因になるかというと、血糖値を上げやすいからです。

血糖値が急激に上がると、それを下げようとしてインシュリンがたくさん出ます。
そうすると血糖が急激に下がります。このときに空腹感が生じるんですね。
血糖値の上下のサイクルが短くて大きいと、一日に何度もたべたくなります。

これを回避するには低グリセミック指数の食事を多く取ります。
グリセミック指数というのは血糖値を上げやすい食材の指標です。

消化吸収に時間がかかり、血糖値の上昇・下行がゆっくりになると、
お腹が空くまで時間がかかり、食事量も減るという具合になります。

グリセミック指数は別記事で書くかもしれませんが、
取りあえずはネットで検索してみてください。